18 シーフリード『がんを餓死させる ケトン食の威力』
- yd
- 2024年7月2日
- 読了時間: 16分
Thomas N. Seyfried
Cancer as a Metabolic Disease
On the Origin, Management, and Prevention of Cancer
John Wiley & Sons Inc.
2012
日本語全訳の要約版 作成 旦 祐介 2024年6月30日
第一八章 がんマネジメントのための代謝的治療の忍耐強い実施
はじめに
転移がんの最良の治療法は、正常細胞を傷つけないでがん細胞を殺すことである。がん産業はそう表明しているが、実際に正常細胞と患者には無害でがん細胞だけ効果的に除去する治療法はほとんどない。がんは成長と生存に発酵エネルギーを必要とする。ブドウ糖とグルタミンががん細胞の主たる発酵燃料である。燃料の制限が全てのがんのマネジメントに有効である。
食事エネルギー低減(DER)はがん細胞のエネルギー環境を狙い撃ちにする。DERでは、全ての細胞が入手できる栄養を奪い合うが、がん細胞だけを叩く夢の治療薬はまだない。最近私は同僚たちと、制限ケトン食治療のガイドラインを開発した。このガイドラインは全てのがんに適用でき、頑張って病気を管理しようとする患者に向いている。医学会が悪性腫瘍の効果的な治療法を知っていたら、毎年全米で五六〇、〇〇〇人が死ななくてすむ。この数字と現在の不十分な治療法を見ると、進行がんの患者は、自らの治療に果たす役割を考え直したくなるだろう。各人一人ひとりが自分自身の運命を左右できる。
がんの治療戦略としての制限ケトン食を実施するガイドライン
悪性腫瘍では制限ケトン食が効果的な初期治療である。制限ケトン食は、ブドウ糖とグルタミンを制限する薬と併用するとさらに効果的である。以下の治療計画は、年齢と健康状態によって調整してよい。第一段階がケトン食による食事エネルギー制限、第二段階が手術、そして第三段階はファスティングとケトン食による管理段階となる。本章の主眼は第一段階である。
第一段階
第一段階では、緩やかに血糖値を下げながら同時にケトン体のレベルを上げる。ブドウ糖とケトンの血中濃度の測定は、糖尿病の人と同じ方法である。血糖値スパイクをもたらす食品を特定するために、正確な記録をとる。
ケトンレベルは、尿より血液で測定した方が良い。その後は尿検査は補助的に使える。指先の採血は痛いので、子供には回数や方法を調整してよい。採血せずにモニターできる機械がある。
ほとんどの患者にとって、血糖値3.0-3.5 mM (55-65 mg/dl)とケトン値4-7 mMで、がんの成長を減らす効果がある。この値は血管新生と炎症を阻害し、アポトーシスをもたらし、がん細胞のエネルギー不足と成長不良をもたらす。
血中ケトン値は、ケトン食を少量で実施した場合に高くなる。使われないケトンは尿として排泄される。少量摂取の場合、発生したケトンは体内に止まる。というのは、ブドウ糖が得られなくなる場合に、正常細胞はケトンが必要になるからである。ケトン食にケトン·エステルを加えることも役立つ。但し、血糖値を下げない限り大きな効果は期待できない。量が無制限のケトン食だと、血糖値の高止まりになる。もちろん、ファスティング期間にケトン·エステルを錠剤で服用することで、低血糖のままケトンレベルを高められる。
糖尿病でなければ、ケトン値が7-9 mMを越えることはない。健康な人にとってケトン体の上昇は「良い薬」で、心臓、神経、神経変性の病に治療効果がある。食事制限がケトン値を病的なレベル(15-20 mM)に押し上げることは考えられない。心配されるのは、糖尿病患者にとって生命の危機となるケトアシドーシスである。健康な人なら、ケトンは尿として排泄される。ケトン体はがん細胞の生存を危うくするが、正常細胞は影響されない。ケトン体の増加は、がん細胞に有毒だが正常細胞には健康増進につながる。夢のような効果のある薬は他にない。
健康状態の良い患者は、まず水だけファスティングから始めるべきである。ファスティングは、四八~七二時間のうちに治療効果が出る範囲まで血糖値を下げ、ケトン値を上げる。この絶食は厳格すぎると聞こえるかもしれないが、二~三日のファスティングは、利点を知っている人には難しくない。ファスティングは、てんかんの子供の治療としてケトン食の前に行う。
食事療法は、がんクリニック、または医師の指導の下で自宅で開始できる。患者全員にシェルトン著『命のリニューアルのためのファスティング』という本を勧めたい。副作用の心配を和らげ、食事削減の長所を説明してくれる。ジョン·フリーマン他著の『ケトン食: てんかんの子供その他の人たちの治療』もケトン食とファスティングを説明している。
体力の落ちている人や健康状態のよくない人は、徐々にケトン食を始めた方がいい。水だけファスティングをやらない人は、炭水化物は一日12g未満、タンパク質は0.8-1.2gが治療開始の目安である。フリーマンの本に基づき毎日食べる分量を注意深く計る必要がある。
ケトン食療法では、脂肪と油でエネルギーを賄うことになる。治療のケトン·レベルになるまで、数週間は必要である。がんを治療するには血糖値を早く治療レベルまで下げる必要である。
ひとたび血糖値が55-65 mg/dl、ケトン値が3-5 mMに到達したら、この状態を維持する。ケトン食は利尿作用があるので、利尿薬は服用しない方が良い。制限ケトン食の期間中は効果をモニターして、他の薬の服用は最低量に抑えるべきである。食事療法が長期間にわたる場合は、電解質レベルも確認して必要な補充するべきである。
ケトン食のレシピは、チャーリー財団のウェブサイトに掲載されている。この財団は、子供のてんかん発作に対処するためのケトン食情報を共有するために設立された。ベス·ズーペック·カニアは財団の栄養管理師で、脳腫瘍患者にケトン食治療を実施した経験もある。第二〇章でその経験を語ってくれる。
どのようなケトン食でも、量を制限すれば、血糖値を下げケトン値を上げる。脂肪の率は柔軟で構わない。ブドウ糖がゆっくり放出される低GI食は、子供のてんかん発作の管理に使われているが、がん患者でも血糖値管理に適している。
シェルトンやフリーマンの本を読んでいない患者は、特に最初の数週間、専門的な栄養指導が必要である。重要なのはケトン食を摂取しながら、少ない量を消費することである。ケトン食は、血糖値とケトン値をコントロールできれば、様々な選択肢があり得る。南アジア古来の脂肪食品ギーと卵の黄身を組み合わせればケトン食メニューになる。黄身とバターを混ぜて六六歳の神経膠芽種患者の生存を維持した内科医を知っている。その患者は診断後三七か月も生きられた。カロリーは一日1200-1300 kcalだった。血糖値は測定しなかったので、三六か月の間治療域にあったかは定かではない。ココナツ、サフラワー、サンフラワーなどのオイルも使える。MCTオイルは小腸から直接肝臓に行きケトンに代謝されるので適している。MCTオイルは胃腸障害になるかもしれない。その場合は他の選択肢に切り替える。
ケトン食を食べすぎると、血糖値は十分に下げられない。ケトン食を摂取する時は「少ないことは良いことだ」と覚えておくべきである。これは特に患者が空腹だったり特定の食べ物を食べる欲求を抑えられなかったりする時に思い出してほしい。ケトン食を食べすぎると、インスリン抵抗と高血糖をもたらす。これはがん進行を加速し患者の死につながる。
ケトン食実施中は正確な食べ物記録をつける。超低炭水化物治療の経験のある専門家と共有するべきである。計画通りかどうか確認するために「ケトン計算表」(チャーリー財団サイト)を使えば、ふさわしくない食品を確認できる。
導入期のあと、体重のある人は、正常体重の幅の下限まで週一キロの割合で無理なく減量できる。痩せている人は、注意深くモニターされるべきである。ケトン食ではいくつかビタミンとミネラルが不足するので補給が必要である。砂糖の入っていないマルチビタミンとカルシウムが標準的である。加えてオメガ3及びビタミンDが推奨される。ビタミンBの追加は、正常細胞のエネルギー代謝を強化する一方、がん細胞にはストレスになる。ケトン食に追加するサプリメントは、血糖値が上がらないようにする。どのサプリが血糖スパイクを生じるか、摂取時に血糖値モニターを使って確認する。
カロリー調節と体重減
ケトン量を適切なレベルに持っていくのに必要なカロリーは個人差がある。患者によっては大きな体重減なしにブドウ糖とケトンを治療レンジに持っていくことができるが、際立った体重減を必要とする場合もある。
ケトン食に伴う体重減はカロリー制限の結果であり、病的なものではない。放射線·化学療法のあとの体重減は治療の毒性による食欲減退の結果である。がん学者がケトン食の体重減少を批判する一方で、標準治療による体重減少は当然と見なしているのは不思議である。標準治療のあとにしばしば提供される高カロリー飲料は、がんに餌を与えるようなものである。吐き気と嘔吐を抑えるためのステロイドも逆効果である。逆に化学療法中にファスティングをすれば治療効果が上がる。
血糖値を下げケトン値を上げればがんの進行は抑えられる。ケトン値を上げても血糖値が高かったら、がんは抑えられない。血糖値が低く抑えられれば(55-65 mg/dl)、ケトン食療法の効果は高まる。人間の場合は個人差が著しいので、カロリー制限は個別に対処するべきである。頻繁に血糖値を測定し、パーソナライズされた食事が治療効果を最大限に発揮させるだろう。
ブドウ糖離脱症状
ケトン食を始めると、一部の患者は、頭のふわふわ感、吐き気、頭痛などを体験する。これは一時的なブドウ糖禁断症状である。人間の脳は、熱量の大きい食べ物を食べ続けることからブドウ糖中毒になっている。ケトン食療法を続けるにあたり、個人の強い意志と動機付けが必要である。
ブドウ糖の禁断症状は、初めてファスティングをする人の方が激しい。症状は年配者の方が強い。
しかし、化学·放射線療法の副作用と比べると、ケトン食の症状は緩やかで、数日でなくなる。それでも、一部の人たちには禁断症状と空腹感が耐えられない。担当医は、一部の患者にはケトン食を実施できないことを理解しておくべきである。一部の人はとにかくファスティングはできない。標準治療が唯一の選択肢になる。
やりたくない人にケトン食を押し付けるのはよくない。やる気があって、規律を守れて、健康な人で、食生活とライフスタイルの変更を受け入れられる人に限られる。残念ながら多くの患者はそれができないか、やる気にならない。メディアが、脂肪摂取は不健康であると吹き込んだことも影響している。忍耐強い教育、実施プロセスへの関与、及び家族のサポートが、成功のカギである。
ケトン食はブドウ糖·ケトン体の調節をしながら、空腹感を減らすことができる。ファスティング時にケトン·エステルがブドウ糖·ケトン体にどう影響するかの評価はまだ確認できていない。
ケトン食では薬の用量を注意深くモニターする必要がある。阻害剤2-DGはケトン食下の方がよく効いた。複数の骨髄腫のケトン食治療に2-DG(40mg/kg)を併用したが副作用はなかった。この組み合わせは多くのがんの成長抑制に効果があるだろう。
ケトン食はステロイドとの併用では効果を発揮できない。血糖値を治療レンジまで下げられないのである。ステロイドは血糖値の低下を防ぐ。ステロイドは、常用すれば生き残ったがん細胞の成長を加速し、患者の死につながる。火にガソリンを注ぐようなものである。
運動の役割
ファスティング時は、適度の運動は構わない。激しい運動は、乳酸やグルタミンを含むアミノ酸を放出し血糖値を上げてしまう。さらに過度になると循環する細胞が活性化し、それが血流から離れてがんに入る。これは問題を増やすことになる。ジョギングよりウォーキングが良い。適度な運動は免疫システムに負荷をかけず、治療に貢献する。
一部のがん患者は過度な運動をしたくなるらしいが、生命が危うくなる病気にかかっているのだから、リラックスした状態を維持するべきである。患者の教育はこの代謝戦略のカギである。
第二段階 手術
第二段階は外科手術になる。これは、制限ケトン食実施後のオプションとして提案する。但し、この選択肢は、「経過観察」期間が手術までの間に取れる場合のみ可能である。受診段階で危機的な状態の患者にはこの選択肢はない。食事制限または制限ケトン食ががんの血管分布と炎症を減らすことで、正常細胞とがん細胞との境界線がはっきりすると、手術がやりやすくなる。制限ケトン食は全てのがんに効果があるだろう。
血管分布が少なく境界線がはっきりした小さながんの方が切除が楽である。制限ケトン食で数週間治療すると、がんの炎症も血管新生も減り、より大きな腫瘍除去が可能となり、長期生存と治癒の可能性が高まる。
診断直後に切除すると、周辺のミクロ環境の炎症を誘発しかえってがんを悪化させてしまうことがある。外科的手術のみだとミクロ環境を乱してがん細胞の侵襲性を高めてしまうが、制限ケトン食は手術の弊害を抑制できる。
手術は特に初期がんの場合は逆効果になる。食事療法はがんの進行を自然に遅らせる。手術に行く前に時間を稼ぐことができる。手術前に徹底した食事療法を実施すると、末期あるいは転移性のがん患者でも、生存が伸ばせる可能性が出てくる。がんを完全に切除できる手術なら、がんを治癒できる。
第三段階 維持
最終段階の治療計画は、生き残ったがん細胞に圧力をかけ続けるものである。私たちの神経膠芽種の患者は、大部分のがんを除去した手術の数日後に、ファスティングと制限ケトン食を開始した。この食事制限の圧力は、一週単位で、制限ケトン食により、栄養満点だがロー·カロリーで低GI(ゆっくり消化し血糖値を急激には上げない)の食事を繰り返す。血中の低ブドウ糖と高ケトン体状態は、がんが治癒するまで続ける。がんに長くストレスをかけ続けられれば、長期の予後はよくなる。これを栄養に配慮しつつ、健康も増進しながら続ける。定期的にMRIまたはPET画像を撮影し分析する。
制限ケトン食は、がん細胞のエネルギーを削るので、がんは進行しなくなるが、制限ケトン食単独でできるわけではない。維持戦略の目標は、進行した転移がんの患者に少なくとも三六か月生きられるようにすることである。進行がん患者には自分の病状をきちんと告知するべきである。
生存率を大幅に伸ばすために、制限ケトン食に併用する形で、ブドウ糖阻害剤2-DG (30-40 mg/kg)とグルタミン阻害剤フェニルブチレート(15 g/day)をと併用する。グルタミン阻害剤DONをグルタミナーゼ阻害剤と併用するのも有効である。ブドウ糖とグルタミンを同時に標的にできる薬の開発に期待したい。
制限ケトン食は毒性がなく治療効果が上がるので、がんのエネルギー代謝を標的にする他の多数の薬と併用できる。カロリー制限模倣剤を制限ケトン食と併用すると、顕著な効果が見られる。ファスティングが低用量の化学療法への反応を向上させることがわかった。脳腫瘍の手術後、放射線治療はがん成長に影響せずに四~六週間遅らせられるので、その期間に放射線か制限ケトン食か患者は考えるゆとりができる。標準治療の治療結果が芳しくないので、食事制限が広く採用されるようになるのは時間の問題である。
複雑な問題、、、
制限ケトン食の普及には、いくつか課題がある。一つは、この食事療法が従来型の医薬品を使わない点である。現代医療は、特に確立し受け入れられた治療法が存在する時、それがどれほど有毒で無力だとしても、医薬品に頼らない食事療法は受け入れない。がんの標準治療は手術のあと、放射線と化学療法の組み合わせである。患者は、血糖値を高めるコルチコステロイドを処方される。
一部の患者は、治療前から望みのない患者と見捨てられる。神経膠芽種の年配の患者では、治療をされないか、治療なしを選択する人数が増えている。悪性脳腫瘍を生き抜いた子供には重大な神経的損傷が起き、長期の罹患と死亡率は高まる。さらに悪いことに、従来型の治療が実は病気を悪化させる。こうした状況は受け入れ難いもので、標準治療が不十分であることを示している。
制限ケトン食を総合的に模倣できる夢の治療薬が開発されれば、がん治療の一番簡単な方法になる。しかし、食事制限なしで、血糖値を下げ同時にケトン値を上げる薬はまだできていない。制限ケトン食は経験ある実務者の不足から、困難を抱えている。がん学者がオットー·ワーブルクや彼の理論を知らないことも問題である。全がん学者が開業する前にワーブルクの論文を読めば、がんマネジメントはもっと成功するようになるだろう。
放射線治療と化学療法が多くの悪性腫瘍の標準治療である
放射線療法のせいで、がんは攻撃的になる。正常細胞のミトコンドリアを損傷し、炎症の環境を作るからである。放射線は正常細胞に有毒で、がん細胞には成長を促す。化学療法も組織の壊死と炎症を引き起こす。標準治療による健康な長期サバイバーが極めて稀であることから、制限ケトン食とエネルギー標的薬との組み合わせは、有望な治療法である。
遵守
制限ケトン食の最大の課題は、制約を厳格に守ることがなかなか難しい点である。厳格に守らなくても、がん進行がわずかに進む程度ですむが、命が短くなるのが治療法を守らなかったがん患者の運命である。
食事治療法は自宅で続ける方が難しい。自宅でケトン食を実践する患者は孤独に感じる。自宅で気が散ることも遵守を妨げる。リラックスしたストレスのない環境が欠かせない。忍耐強い教育もクリニックでの方がうまく行く。食事療法は専門クリニックの方がうまく実施できる。確かに登録栄養管理師、栄養師及びケトン食に習熟している医師との相談は患者にとって良いことである。
遺伝子病としてのがんという見方
もう一つ、制限ケトン食の実施を困難にしているのは、がんが遺伝子の病気であるとする根強い見方である。遺伝子に端を発しているとされる病気について、なぜエネルギー代謝治療法にシフトするべきなのか。遺伝子病としてのがんという見方は、患者一人ひとりにパーソナライズされた分子標的療法への投資を促している。さらに重要なことに、遺伝子治療が全く成功しないので、放射線と化学療法が続いている。
ここまで説明したように、がんはエネルギー代謝の不具合の病で、遺伝子の変異は全てミトコンドリアの損傷の結果である。がん細胞には一〇〇個以上の突然変異があるというエビデンスがある。どうやって全部を標的にするのか。細胞核移植実験は、細胞核の遺伝子が病気を駆り立てているわけではないことを明確に示している。遺伝子戦略は大失敗だった。ひとたびがんがエネルギー不足の病であると認識されたら、もっと効果的で毒性の低い治療法が出てくるだろう。そうなれば有害な標準治療を放棄できる。
ケトン食とがん治療
制限ケトン食のメカニズムが批判されることもある。ブドウ糖とグルタミンを標的にしながらケトン体を増やすと、なぜ悪性腫瘍の治療になるのか。がん細胞が発酵エネルギーに依存することは実証済みである。ブドウ糖とグルタミンが基質レベルリン酸化を通して発酵する。がん細胞はケトンを活用できないので、発酵燃料がなくなると飢餓状態になる。メカニズムがわかっているのにこの無害な治療法が使われないのは、儲からないからである。
カケクシア[悪液質]
食事制限療法に関するもう一つの心配事は、ただでさえがんのせいで筋肉が衰え体重が減る(この状態をカケクシアと言う)患者に、さらに体重が減りやすい代謝療法を推薦できるかという問題である。カケクシアが強い患者は予後が悪い。しかし制限ケトン食は炎症を減らし貧血を抑える。
従来の治療法と異なり、食事制限や制限ケトン食は、がん細胞を標的にしながら正常細胞の健康と活力を増進する唯一の治療法である。この点で制限ケトン食は標準治療より根本的に優れている。
患者情報
低糖質で高脂質の制限ケトン食は、血糖値を下げ、ケトン値を上げる。ケトンへのシフトでがん細胞にはブドウ糖が回りにくくなる一方、ケトンは正常細胞を守る。但し制限ケトン食の実施には、患者教育、動機付け、及び規律が必要である。このエネルギー代謝治療は、魅力的な代替治療または補助的治療法になる。
コメント