1 トマス・カウアン医師の『伝染の真実』
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- 2024年7月30日
- 読了時間: 12分
出典
Thomas S. Cowan MD and Sally Fallon Morell
The Truth About Contagion: Exploring Theories of How Disease Spreads. Skyhorse 2021.
注記
カウアン博士はコロナウイルスに関連して、現代の伝染医学とウイルス学に警鐘を鳴らしている。
第1章 伝染
全訳
直ちに感染の核心に入ろう。症状が伝染したものであるとどうやって見分けるのか。想像できると思うが、一般に病気の原因、あるいは特定の患者の症状の原因を確定するのは複雑で困難な任務である。明らかなことは、ある人の人生のある時点で考慮しなければならない要素はたくさんある。その症状は遺伝子のせいか、毒素、暴食、栄養失調、ストレス、電磁波、後ろ向きの感情、プラセボ効果、半疑薬効果、あるいは他人からのバクテリアやウイルスの感染の結果なのか判定するのは難しい。
この泥沼状況から抜け出すためには、因果関係を証明する明確なルールが必要である。明快でシンプルで正しい判断基準である。規則は確かに存在するが、長年無視されてきた。残念なことに、このガイドラインに従わなかったことで、社会の組織が破壊されそうになっている。
例を挙げて説明したい。発明家が電話をかけてきて、新しい卓球の球を発明した、その球はレンガの壁を壊せて、ビルの解体がとても簡単にできるようになる、工務店の人や大工にとっても安全に作業できるようになる、と言ったとしよう。面白そうだがピンポン・ボールでそんなことができるとは信じられないので、発明家にどうやって卓球の球が壁を壊せると判断したのか見せてほしいと頼むだろう。すると発明家の会社からビデオが送られてくる。そのビデオでは、ピンポン球を岩と氷の塊と共にバケツに入れて、壁に投げつける様子が写っている。壁が壊れると、「これが証明だ」と言われる。
ちょっと待ってほしい。これでなぜピンポン球が壁を壊したと言えるのか。バケツに入っていた岩と氷のせいではないのか。
「いい質問ですね」発明家は答えて、別のビデオを送ってくる。架空のピンポン・ボールが架空のレンガの壁を壊すビデオであるが、これが実際のボールと壁を再現したものであると言う。しかしまだ何かおかしい。コンピュータ画像やビデオで示すのは簡単だが、誰しも実際に起きることとは違うと思うだろう。
発明家は質問攻めを受けて憤慨するが、投資を考えているのはあなたなので、財政支援を受けるために説得を続けて、卓球の球がどれほど特別なものか詳細な分析結果を送ってくる。球の表面には特殊な突起があり「レンガを繋ぐセメントを破壊する」と説明されている。さらに球には軽量な内部構造があり、発明家によれば、球の威力を増幅し何百倍も強力になっていると言う。これこそが壁を解体できる絶対的な証明だというわけである。
この時点でこのきちがい発明家との電話は切ろうと思うだろうが、相手は切り札を出してくる。この新分野であるピンポン球解体業の著名な研究者5名の登場するビデオで、当然のことながらピンポン球解体評議会が研究費を全額支出している。一人一人が、さらなる研究が必要なものの、「推定できる」証拠として、高効率は確かめられていて、注意深い投資は妥当性があると言う。この時点で電話は切って、廊下を覗いてアリスの不思議の国に迷い込んでしまっていないか、登場するキチガイ帽子屋(マッド・ハッター)と話していたのではないか途方にくれるというわけである。
もしこのピンポン球が本当にレンガの壁を解体できるなら、やるべきことは球を壁に投げつけてどうなるか記録した上で、同じ実験を利害関係のない人たちにやってもらって、球の中に鉛が入ってないか、破壊した壁がハリボテのレンガでないことを確認してもらうべきである。この検査は「究極的な卓球球テスト」と言うべきだろう。
荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、この証拠の欠如が「コロナウイルス」のパンデミックで実際に起きている。コロナウイルスと呼ばれる微生物が免疫システムの壁を壊し、細胞に侵入し、内部で再生産を始めるという筋書きである。球を壁に投げつけてどうなるかの究極的な検査は、誰もやっていない。やろうと言い出せば、ネット上のトロール(監視や嫌がらせをする人たち)が暗闇から現れて、「フェイク・ニュース」を拡散しようとするキチガイ扱いし始める。
球が壁を壊せるかの基準は、異論はないだろう。おおかたの人の意見は一致するはずである。球が本物の壁を壊すのを目撃すればそれが証明になるはずである。言い換えれば、正気で理性的な人間は、究極的なテストを受け入れるはずである。
[コッホの仮定に関する部分]
ハインリッヒ・ヘルマン・ローベルト・コッホ(1843-1910)は近代細菌学の祖の一人である。バクテリアを分離する実験室技術を生み出し改良しただけでなく、バクテリアを撮影する技術も開発した。彼の研究に基づき「コッホの仮定」が生まれた。これは、特定の微生物が特定の病気を起こすことを判定する以下の4つの検査基準を提示している。
1 その微生物は、その病気にかかっている全ての人から検出されるが、健康な人からは検出されないこと
2 その微生物は感染している人から分離され、純粋な培養基で培養できること
3 培養した微生物が、健康な人に与えた時に病気になること
4 微生物に新たに感染した人から、その微生物が再び分離できること
以上の4つの条件を満たした場合、特定の症状に関して感染したことを証明できたことになる。コッホは、4つとも全て満たすことが、因果関係の証明になると主張した。ところが興味深いことに、コッホ自身でさえ、この基準を満たすような感染を見つけられなかった。コッホは、コレラと腸チフスに感染した患者の中に病気にならなかった人がいたので、第1の基準は除外した。今日、細菌学とウイルス学の研究者は、賢明で論理的なコッホの仮定が「1950年代にすでに疫学者によって時代遅れとみなされていた」と信じている。
コッホの仮定はバクテリアを対象としたものであり、1/1000の小ささのウイルスには該当しない。19世紀末、バクテリアはすくえるがそれより小さな粒子は通過するような微小な穴の開いたフィルターを使った実験で、小さな粒子の存在が確認できるようになった。
[トマス・リバーズの仮説]
1937年、トマス・リバーズは、ウイルスの感染性を確認できるようにするために、コッホの仮説を修正した。
1 ウイルスが病気になった人から分離できること
2 ウイルスが人の細胞で培養できること
3 フィルターできること ウイルスがバクテリアも含んである培養基から分離できること
4 フィルターで分離したウイルスを培養して、実験動物に同種の病気を発生させられること
5 感染した実験動物からウイルスを再度分離できること
6 ウイルスに対する特有な免疫反応が検知できること
リバーズはコッホの第1の仮定を削除している。というのは、伝染性の病気にかかっている多くの患者から原因とされる微生物が検出できなかったからである。しかし、コッホの第1の仮定を削除したリバーズのリストを使っても、特定のウイルスが特定の疾患を発生させることはいまだに証明できていない。例えばウイルス病とされるSARSはリバーズの基準を満たしたとする研究があるが、よく調べてみるとリバーズのどの条件も満たしていないのである。
本書で私たちは、バクテリアまたはウイルスのせいであるとされる病気でコッホやリバーズの条件全てを満たした病気はないことを説明したい。これは、コッホやリバーズの条件が不正確だったり時代遅れだったりしたためではなく(むしろ全く論理的である)、バクテリアやウイルスが病気を発生させるわけではないからである。少なくとも現在私たちが理解しているような意味で病気の原因ではない。
この間違いはどうして発生したのか。特にバクテリアとウイルスの「感染」に関してどうして間違ってしまったのか。これは、古代ギリシャの哲学にまで遡る必要がある。またルネサンス期の哲学者や医師たちも主張していたが、近現代のこの仮面舞踏会は、細菌学説の父と言われる大ペテン師で盗作の達人のルイ・パスツールが言い出したのである。
[パスツールの誤謬]
牛乳を飲んだ人たちがひどい下血を伴う下痢になったとしよう。原因究明にあたったあなたは、不幸にして病気になった人たちが飲んだ牛乳に伝染する物質があるかどうか調べるだろう。ここまでの考えは問題なさそうだ。次に新たに発明された顕微鏡で牛乳を調べ、バクテリアがいることを見つける。普通の牛乳に入っているバクテリアと形が違う。ひどい下痢になった人たちは大半がこの牛乳を飲んだことがわかる。病気にならなかった人たちが飲んだ牛乳を調べると、このバクテリアが入っていないことがわかる。そこで同僚の研究者の名前をとってこのバクテリアを「リステリア」と命名する。この調査を確定するために、その他の物質はない段階までバクテリアを分離する。この培養したバクテリアを別の人に飲ませるとひどい下痢になる。トドメは同じバクテリアが患者の便から検出される。これで下痢はバクテリアのせいであると結論づけることができ、感染が証明されたことになる。
パスツールはこうした実験を40年間やり続けた。患者6人からバクテリアを分離したと主張し、順化した培養基を実験動物の脳に注射し、病気にさせた。その結果パスツールは当時人気のセレブ医師になり、国王や首相からもてはやされ、偉大な科学者と称賛された。ところが、彼の業績のせいで殺菌法が開発された結果、牛乳は健康に良い飲み物ではなくなってしまった。彼の実験で病気細菌説が流布し、1世紀以上にわたりこの革新的な学説が西洋医学だけでなく文化や経済生活も支配することになった。
本書では牛乳研究の別の解釈を提案したい。例えば、乳牛に毒物が与えられたり飢餓状態にあったりしたらどうか。ノミ駆除剤を浴びていたら。自然の牧草でなくヒ素を噴霧した穀類を食べていたら。ウィスキー蒸溜所のカスや段ボールを食べていたらどうか。実際パスツールの時代には多くの街で牛にそういうものを食べさせていたのである。
今日授乳する雌牛に食べさせた毒物は確実に牛乳に出てくることがわかっている。もしリステリア菌が何かの原因ではなく、毒物を消化し排泄するための自然の方法だとしたら、どうだろうか。生命体において、これがバクテリアの役割らしい。コンポストに臭いものを入れると、バクテリアが食べて繁殖する。誰もコンポストが病気に感染したとは言わない。むしろバクテリアが生物的治療をしてくれているとも言える。池に毒物の廃棄した場合、藻類が毒物を見つけて消化し、池を健康な元の状態に戻してくれる(投棄し続けなければの話だが)。これも生物的治療であり感染とは言わない。
好気性バクテリアは無酸素状態に置くと、毒素を発生させる。クロストリジウム菌は、健康な大腸で炭水化物を発酵させ、酪酸のような大切な化合物を産出するが、酸素がないとボツリヌス症を引き起こす。バクテリアそのものではなく毒素が人間を病気にする。さらに基本的に言えば、バクテリアが毒物を生み出すのは環境またはテレイン(terrain)のせいなのである。
牛乳に入っている毒物がリステリア菌の存在を説明できるのではないか。雌牛が栄養失調になり毒物を体外に排出できなくなっているような場合である。ちなみにリステリア菌は、何十億ものその他のバクテリアやウイルスと呼ばれる粒子と同じように、私たちの体内に常に存在している。リステリア菌は、不健康な牛乳で拡散される毒物を解毒しようとしているだけなのである。
どうすれば、牛乳に入っている毒物でなくリステリア菌が下痢を起こしていると証明できるだろうか。卓球のボールでビルを解体する例え話と同じ解答になる。つまり、健康な人に牛乳を飲ませるのは、石や氷や卓球の球を入れたバケツで建物の壁を壊そうとするようなものであり、ピンポンの球で解体したと証明したことにならない。証明するにはボールを分離する、つまりこの場合リステリア菌を分離し、それだけを健康な人や実験動物に食べさせ、何が起きるか調べる必要がある。これは、パスツールが実施したと論文で主張したことである。
パスツールは遺産相続人に実験ノートを渡したが、決して公開するなと言い渡していた。ところが孫のルイ・パスツール・バレリラド氏は祖父をあまりに評価していなかったので、実験ノートをフランス国立図書館に寄贈し、同図書館はそれらを出版した。1914年、プリンストン大学のジェラード・ガイソン教授は、実験ノートの分析結果を出版した中で、パスツールが全ての実験研究で重大な詐欺を侵したと暴露した。例えばワクチン接種動物と未接種動物に伝染性の炭疽菌胞子を注射して、未接種動物が死んだと報告したが、実は未接種動物には毒物も注射してあったのである。
実験ノートでパスツールは、バクテリアの純粋な培養基で病気を伝染させることはできなかったとはっきり書いている(当時の技術では当然のことながらウイルスを純化できなかった)。パスツールによれば、病気を伝染させる唯一の方法は、感染した体組織全体を別の動物に注入する(時に彼は、感染を「証明」するために、感染した動物の脳細胞をすりつぶして別の動物の脳に注射した)か、培養基に毒物を加える(彼は、これをすれば、受け手側の動物に感染の症状が出ることを知っていた)かのどちらかだけだった。
彼は、感染させようとする実験は全て失敗し、有名な死の床の告白に繋がった。「ばい菌は重要でない、テレイン[テラン、環境]が全てである」。この場合テレインとは動物や人間の健康状態を指し、毒物に晒されているかどうかのことである。
パスツール時代以来、実験で、バクテリアまたはウイルスの純粋培養基で病気を伝染させられた人は誰もいない。パスツール時代以来、ピンポン・ボールを壁に投げつけてどうなるか実験した人はいない。これ自体驚くべきことだが、配られた手持ちのトランプ・カードは、人類、生物空間(バイオ・スフィア)および地球の地理的空間に底知れないダメージを与え続けている。
第2章、第3章では、バクテリアやウイルスが病気を引き起こしていると誤認されている事例を検討する。ジェットコースターは動き始めたばかりである。
了
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