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細胞核・細胞質入れ替え実験 シーフリード『がんを餓死させる ケトン食の威力』補足

  • 執筆者の写真: yd
    yd
  • 2024年7月5日
  • 読了時間: 3分

トマス・シーフリード博士の著書

Cancer as a Metabolic Disease, Wiley, 2012

において、現在未だに主流の理論である「遺伝子病としてのがん」説を否定する最も重要な実験が、この細胞核と細胞質を入れ替える実験である。このブログでは、原著書にあるカラー図に基づき、説明を補足したい。


シーフリード博士は、人間の住む環境や食生活の影響で、細胞質にあるミトコンドリアが損傷し、ミトコンドリアの呼吸機能が損なわれ、細胞が呼吸により十分なエネルギーを得られなくなると、サバイバルのために、発酵してエネルギーを確保しようとすると理解している。


一般に、この状態になると細胞の機能分化は停止し、アポトーシス(計画死)が行われなくなり、増殖と転移が進む。このことをがん化と定義している。


これに対して、がんが遺伝子病であるとする考え方によれば、人間の住む環境や食生活により細胞核の遺伝子が損傷し、その結果、細胞全体ががん化する。これは、人間の住む環境や食生活などから細胞レベルの不調が発生する点でシーフリード博士の仮説と同じだが、遺伝子の突然変異を重視する点で、その後の説明は根本的に異なる。


さて、本ブログの主眼である実験は、がんが遺伝子病なのか、ミトコンドリアの呼吸不全によるエネルギー代謝病なのかを明らかにする実験である。もし遺伝子病であったら、がん化した細胞核を正常細胞の細胞質に移植した時、その細胞全体は、細胞核の遺伝子変異に影響され、がん化するだろう。もしがんがシーフリード博士の言うような代謝病だったら、がんの細胞核を移植してもがん化しないだろう。


それを明確に説明する図が次の四連の図である(ブログ収録の都合上、ここでは二連ずつニ枚に分けて掲載してある)。この図は原著書二〇三ページ第一一章に示されているもので、シーフリード他の実験結果に基づく模式図である(カラー図は原著書冒頭のカラー図版のページに収録されている)。



図(a)は、正常細胞(緑)が正常に細胞分裂して二つの正常細胞になることを示している。

図(b)は、がん細胞(赤)が細胞分裂して二つのがん細胞になることを示している。




重要なのは図(c)で、正常な細胞質(緑)にがん細胞の細胞核(赤)を移植した場合、細胞分裂した細胞は正常な細胞になった。

図(d)は、がん細胞の細胞質(赤)に正常な細胞核(緑)を移植した場合、細胞分裂した細胞はがん化した細胞(または細胞死)になった。


この実験からわかることは、特に図(c)から、がん遺伝子を持つがん細胞の細胞核が細胞の正常な分裂を妨げない、つまり細胞核の遺伝子ががん化を主導するわけではないということである。むしろ図(d)から、細胞のがん化、あるいはがん細胞を主導するのは細胞核(や細胞核の遺伝子)ではなく、がん化した細胞質であることが確認できたと言える。


原著書(一九九ページ)には、カエルのオタマジャクシで行った同様の実験で、図(c)の移植を行った受精卵がシャーレの中でオタマジャクシになり、つつくと泳ぎ、エラで呼吸し、切断された尻尾が再生するなど、極めて正常な発達を遂げたことが記録されている。


がんの細胞核を移植しても、そのことだけではがんにならない。これは極めて明快な実験結果であり、専門医でなくても容易に理解できるだろう。また、細胞核に存在するミトコンドリアが健康であれば、細胞はがん化しないとするシーフリード博士やオットー・ワーブルク博士の仮説を支持する強固なエビデンスである。


このような重大な証拠があるのに、がんの遺伝子説が強固に信じられていることの方が驚愕すべきことである。何か作為的なものを感じる。



参考文献

トマス・シーフリード (Thomas Seyfried) Cancer as a Metabolic Disease, Wiley, 2012

はまだ邦訳されていない。全訳の要約版は私のブログで全二一章公開している。

『がんを餓死させる ケトン食の威力』(シーフリード著全訳の要約版、前書きのページ↓)



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