ニューヨーク州PFAS規制最新情報2023 PFAS in NY State latest 2023
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- 2023年1月12日
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米国ニューヨーク州では、2022年12月31日、紙皿などにPFASを添加することが禁止されたのに続いて、2023年12月31日までに、意図的にPFASを加えた繊維の衣服を売ることができなくなります。
1 使い捨て容器
ニューヨーク州は1990年代始めから環境保全法で有害な食品容器は規制してきましたが、新たに37-0209条を追加し、2022年12月31日、意図的にPFASを添加した食品容器の流通と売買を全面的に禁止しました。同州環境保全局によれば、PFASは容器から食品、あるいは埋立地やコンポストに移遷し、大規模コンポストサイトの肥料から農地に移り、巡り巡って野菜を汚染し、人間が消化吸収することになります。食品容器とは、紙や植物繊維から作られたもので直接食物に触れるもの、と定義されます。例えばカップ、カップホルダー、トレイ、包紙、袋、スープカップ、サンドイッチ包装紙、ピザ箱などを指します。
2 衣服
ニューヨーク州のホークル知事は、2022年12月30日に、意図的にPFASを添加した衣服の販売を禁止する法律に署名しました。衣服とは、例えば下着、シャツ、パンツ、スカート、ドレス、ツナギ服、ボディスーツ、ベスト、ダンスコスチューム、スーツ、サリー、スカーフ、トップス、レギンズ、レジャーウェア、正装、着ぐるみ、よだれかけ、おむつを含みます。施行は1年後の2023年12月31日です。
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米国は連邦政府の環境保護庁レベルの規制と、各州政府レベルの環境規制があります。PFAS規制については、いくつかの州の規制の方が先行しています。州規制については、東西両海岸のカリフォルニア州とニューヨーク州が意欲的に規制を推進しています。
今回はニューヨーク州で、食品容器と衣服レベルの規制がテーマです。すでに年末から使い捨て食器が禁止対象になり、2023年末にはPFASを意図的に添加した生地の衣服は販売できなくなります。
PFASは、使い捨て容器から食品に染み出します。衣服の防水加工・防汚加工は、大半がPFASです。衣服から飛び散って吸い込んだり、室内の埃に混じって触れたりすることで、人体に健康被害があります。
バイデン政権下の環境保護庁も相当規制に意欲的です。2022年6月に4種類のPFASに関する厳しい規制案を出し、秋のパブリック・ヒアリングを経て、2022年末には確定するとしていた期限は2023年3月に延期されていますが、業界団体や保守派の政治的圧力とせめぎ合っていると推測できます。中でもPFOAとPFOSについては、測定下限値未満の極めて低濃度の基準を公表しています。デュポンとの裁判で勝訴したロバート・ビロットに言わせると、「現在検知できる濃度のこれらの化学物質[PFAS]でも健康被害をもたらす」ということになります(近刊書『エクスポージャー』の前書きより)。
環境保護庁の提案する規制基準は、PFOAは0.004ppt、PFOSは0.02pptです。日本の現在の暫定的な水道水基準は、PFOA+PFOSの合算値で50pptです。国際的には欧米諸国・EU(70-300ppt)より厳しい基準にはなっていますが、今後さらに厳しくなることはほぼ間違いありません。
2022年始めに日本のある検査機関に問い合わせたところ、現在の測定下限値は0.1pptであり、それ未満の測定は困難であるとの回答でした。日本の水道水基準では、PFAS以外の化学物質の規制は、ppm(100万分の1)で設定されています。いかにPFASが別格の低濃度で健康被害につながりうるか、ということを物語っています。
1pptは、1兆分の1です。オリンピック・サイズの50mプール1000杯(個)の水に"1cc"(1滴)というとんでもない微量です。
参考文献
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