ドイツのPFAS調査2021年6月 PFAS in food and blood in Germany
- yd
- 2022年5月5日
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更新日:2022年5月14日

Teflon non-stick pan

Frankfurt am Main
ドイツ連邦政府機関が、2021年6月に調査報告書を公表しました。驚くべき結果が記載されていました。このブログでは、コメントに続いて、結論部分と食品別のPFAS濃度の表を整理しました。
コメント 1 2021年6月に公表されたドイツの公式の報告書として、資料価値の高い興味深いものという印象を持ちました。よく読むと、アブストラクト(概要、このブログでは紹介していません)にあたる部分はトーンを抑えた記述になっていますが、このブログで紹介したまとめの記述では、踏み込んだ記述が見られます。それもたいへん興味深いと思います。なぜならとても多くの市民の血中濃度が高いこと、重要な食品がかなり高濃度で汚染されていることなどを認める公文書になっているからです。世論を刺激しないようにと配慮していることは明らかです。それでもきちんと調査してきちんとデータを公表しているところはとても好感があります。EU加盟国で情報を共有するためか、英文で公開していることも高評価です。 2 PFASの血中濃度が高めであることは想定内ですが、米国だけでなくドイツでもかなりの高さであることは驚きました。食生活やテフロン製品の普及度などの点で、日本も同じような汚染度だろうと推測します。日本ではPFASに関する疫学調査がされているという話を寡聞にして知りません。検査・調査しなければ実態把握もできないわけです。文字通り臭い物に蓋をする姿勢が見え隠れします。 3 さらに衝撃的なのは、食品群別にサンプル調査をしたデータです。案の定、肉と魚が突出して汚染度が高い。特に家畜は、汚染された河川や地下水の影響をまともに受けるのでしょう。魚も他の食品群に比べて強く汚染されていますが、食肉ほどではありません。もっと詳しく分類した調査結果も同じ報告書に掲載されていますので、順次掲載しますが、川ざかなの方が海ざかなより濃度が高いです。川に放出されたPFASは海に流れ込んで希釈されるのでしょう。これも推測ですが野菜は、汚染のひどい地下水より、薄められた雨で育つから、PFASの影響を受けにくいのでしょう。
要旨(読みやすく意訳しました)
ドイツは、EU提案を追認し、PFOS, PFOA, PFNAとPFHxSの合計として、週あたり4.4 ng/kg BW(毎週体重1キロあたり4.4 ngまで許容する)を採用する。この基準(TWI)は、乳幼児の血清中のワクチン抗体量が減少したため設定された。
血清中の基準は1リッターあたり17.5 マイクログラム(micrograms/L)と定めているが、授乳する母親はより厳しい1リッターあたり6.9 マイクログラムとする。
ドイツ3都市で測定した血清中のPFAS濃度(内部暴露)は、中央値は血清1リッターあたり5.8 マイクログラム、4.1マイクログラム, 7.1 マイクログラムであった。育児中の母親に関しては、2%〜36%の人の血清が基準値を超えていた。ドイツでは1歳児の10%が17.5マイクログラムの基準を超えていると推定できる。
食品中のPFAS汚染(外部暴露)についてはデータが不足しているものの、「魚・魚製品」と「食肉・食肉製品」についてPFAS濃度が高く、「4種のPFASへの暴露に顕著に貢献」している。「卵・卵製品」と「乳・乳製品」は濃度が低い。「プラント・ベースト食品」(野菜と果物)は、現在の分析方法では大半が検知限界・定量限度未満であるため、ほとんど評価できない。飲料水については重要な暴露源でありうるが、今回の報告書の対象外である。
この結果、ドイツの成人はTWI(週あたり摂取許容量)の2倍から5倍のPFASを摂取している。十代の若者は2倍から7倍である。成人の暴露量の中央値はTWI範囲内であるが、50%の人たちがTWIを超えている。十代の若者の暴露量の中央値はTWI値かその2倍である。9歳までの乳幼児は成人の2倍から3倍の暴露となる。これは体重あたりの食品摂取が高いことが影響している。乳幼児の血清中平均濃度は、TWIの3倍から11倍である。
ただし、この乳幼児に関するPFAS濃度結果は、すでに出版されている血清中濃度のデータと整合しない。特定の個人のデータが突出して高いことがその理由である。
成人の食品摂取による暴露(外部暴露)と血清中濃度(内部暴露)は、整合性があるが、血清中濃度は予想よりやや低かった。
・一部の成人と十代の若者の血清中濃度が高いことから、乳幼児の免疫抗体の減少との関連性が指摘できる
・抗体量の減少は、ワクチンだけでなく病原菌全般に対する免疫力の観点から好ましくない
・乳幼児に関して、PFAS濃度が高いから感染リスクが高まっているとは言い切れない
・成人と十代の若者に関して、PFAS濃度が抗体量に影響するかはわからない
・母乳の利点があるので、授乳に関する現在の方針を変更することはない。世界のどこの国も授乳は制限していない
消費者は広範に存在する汚染物質PFASへの暴露をほとんど防げないが、食品や飲料水からの摂取を減らすべきである。
食品別PFAS濃度一覧表
この報告書には多数のサンプル調査をしたデータが掲載されています。このブログでは食品群別のデータの全体像を指摘します。各論は別のブログで整理する予定です。
4種のPFASの食品群別の濃度
食品 検体 検出 濃度
個 率 μg/kg
シリアル21 4.8 % 0.07
野菜 184 17.4 % 0.18
根菜 95 1.1 % 0.01
果物 108 0.9 % 0.01
肉類 762 41.3 % 52.90
魚介類904 45.0 % 5.38
乳製品379 13.7 % 0.01
卵製品 26 23.1 % 0.36
菓子 34 0 % 0
飲料(水除)554 14.4 % 0.001
離乳食 61 0 % 0
備考
1 「検出」とは、PFASが1種類でも検出されたサンプルの割合を示します。たとえば肉類では、検査した762のサンプルのうち、41.3%(つまり314個)からPFASの少なくともどれか1つは検出されたということを意味します。
2 濃度は、検出・不検出にかかわらずすべてのサンプルの平均値を示しています。たとえばシリアルについては、シリアルに関する定量限界値がだいたい0.80μg/kgであるところ、サンプル21個のうち1つだけから定量限界値を超えたPFASが検出されたので、検出されなかった20サンプルも加えた21個の平均値を算出してあります。
日本でも、世論を喚起し、きちんと調査をして、実態把握と対策を進めたいものです。
報告書 「食物のPFAS ドイツ連邦リスク評価研究所は市民が化学薬品にさらされていることを追認した」 PFAS in food: BfR confirms critical exposure to industrial chemicals BfR Opinion No 020/2021 issued 28 June, 2021 https://www.bfr.bund.de/cm/349/pfas-in-food-bfr-confirms-critical-exposure-to-industrial-chemicals.pdf
DOI 10.17590/20210914-121236 全71ページ
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