カリフォルニア州の驚くべきPFAS規制基準 2021年9月
- yd
- 2021年11月22日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年4月3日

カリフォルニア州は、PFAS規制問題に真剣に取り組んでいます。PFAS規制値の法制化に関する説明会での提案は以下の通りです。
結論→PFOA基準案は0.007ppt、PFOS基準は1pptとする
1 原案は科学(the science)の厳格な研究論文の分析に基づいている。
2 生活環境に存在するPFOAとPFOSのレベルが人間の健康を害しうるという結果が出てきている。これは実験結果で裏付けられている。
3 有害推定とクリアランス率は、人間を対象とした新しい研究データを使って算出した。
4 PHGs原案は、PFOA/PFOSが健康に影響しないように算定した。健康にへの影響は、がん、及び、発達・免疫・脂質・肝臓・甲状腺に関わる影響を含む。
PHGs(Public Health Goals)及びHPCs(Health Protective Concentrations)の原案
化学物質名 PHG PHG Effect HPC HPC Effect
PFOA 0.007ppt 腎臓がん 3ppt 肝臓障害リスク増
(人間データ) (人間データ)
PFOS 1ppt 肝臓・膵臓腫瘍 2ppt 総コレステロール増
(動物データ) (人間データ)
私のコメント
米国では連邦政府の環境保護庁(EPA)は厳しい環境基準をなかなか出せない政治・行政的な背景があります。それに対して州政府は州内規制の権限を持っているので、機動力があり、より厳しい基準を速やかに徹底することができます。今回も連邦政府のEPAの規制強化を待たずに、州レベルでの基準設定を急いでいると見られます。
それにしても、現行の連邦政府基準が70pptである時に、州EPA基準が1pptというのに私は驚きました。これが確定するのはまだ少し先のことになりますが、やがて連邦レベルや国際レベルに波及していくでしょう。
日本の水道水基準は50pptであり、測定下限値は5pptです。5ppt未満は測定できていません。カリフォルニア州基準並みに厳しくするなら、測定方法や機材を見直す必要がでてきます。とても多くの測定ポイントで、1pptを上回る汚染が確認されるようになるかもしれないと危惧しています。
以上
解説と原文資料
会議の議題
①計画の背景とPHGs(Public Health Goals)提案の概要
②実験室動物に対する毒性結果
③動物データに基づくPFOSの発がん性健康保護濃度の算定
④毒物影響(toxicokinetic)の検討と人体クリアランス要素の算定
⑤人間データに基づく発がん性・非発がん性影響に関する健康保護濃度の算定
PHGsとは
公衆衛生達成基準とは「飲料水の科学汚染物質に関して生涯にわたり重要な健康リスクが生じないレベル」と定義されている。PHGsの発がん性は100万人あたり1人と定められている。カリフォルニア州法は、経済的・技術的に実現可能な限り、水道局が最大汚染許容度をPHGに近づけるよう求めている。同州水道局は健康保護濃度(Health Protective Concentrations, HPCs)を発がん性・非発がん性影響に基づき定める。もっとも健康保護的な水準をPHGとして選定する。
PFOSのPHGs算定式
公衆衛生達成基準(PHGs)の算定式は以下の通り。
PHG=R/(CSFxDWI)
R = 発がん率100万分の1
CSF = がん傾斜率 15.6 (mg/kg-day)
DWI = 飲料水摂取量 0,053L/kg-day
PHG = 1ng/L, 1ppt
今後の予定(カリフォルニア州)
パブリックコメントは2021/10/28まで受け付ける
・ドラフト原案は、独立の外部査読を受ける
・第二ドラフト案は、査読結果とパブリックコメントを反映し、再度パブリックコメントを受け付ける
・PHGs(公衆衛生到達目標)最終案は科学および公衆衛生の観点のみに基づく
(カリフォルニア州水道局は飲料水の水質基準を設定するにあたり、経済要因および技術的実現性とともにこれらのPHGsを検討する。)
参考資料1
2021年7月公表された報告書「飲料水におけるPFOA/PFOSの公衆衛生到達目標原案」
Proposed Public Health Goals for Perfluorooctanoic Acid and Perfluorooctane Sulfonic Acid in Drinking Water
参考資料2
↑これに基づく2021年9月28日の公聴会のPPT資料「飲料水におけるPFOA/PFOSの公衆衛生到達目標原案」
Proposed Public Health Goals for Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctane Sulfonic Acid (PFOS) in Drinking Water
コメント