「PFASには安全な基準はない」 環境保護庁の方向性
- yd
- 2021年12月26日
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更新日:2022年4月3日

米国環境保護庁(EPA)の準備しているPFAS規制基準も、カリフォルニア州の基準と同じく、きわめて厳しいものであるとする記事がありました。長年、環境裁判を担当していて、PFASについてもたくさん現状分析の記事を書いている弁護士の書いた最新のもので、法律専門誌に掲載された企業向けの記事です。以下に抄訳を掲載します。
「『PFASには安全な濃度はない』という予感」
John Gardella氏(CMBG3 Law法律事務所、ボストン)
2021/12/7発行
1つ前の記事では、2種類のPFASが健康に与える影響について、環境保護庁(EPA)が科学諮問委員会(SAB)に提出した科学的知見は、当初予想よりはるかに厳しい規制値をもたらすかもしれないと予測した。しかしEPAは、さらに踏み込んだきわめて低い規制値を設定する可能性がある。それによって、裁判の原告が製造物責任において「PFASには安全な濃度はない」という説を陪審員に提示できる可能性が出てきた。PFOAやPFOSを過去に使ってきたか、現在使っている米国企業は、EPAの準備している報告書が場合によっては何十年も続く訴訟をもたらすかもしれないことを肝に銘じるべきである。
2021年11月16日、EPAが庁内のSABへ提出したデータは、PFOAとPFOSの健康被害は以前知られていたよりはるかに低いレベルで発生するかもしれないし、PFOAは発がん性がありうる、としている。
具体的には、水道水に関して、健康被害をもたらさないPFOAの摂取限度は(体重1kgあたり)0.0000000079 mg/kg/day、PFOSは0.0000000015 mg/kg/dayである。EPAは昨秋すでにその他PFAS3種について摂取限度を提示している。GenX (0.000003 mg/kg), PFBS (0.00003 mg/kg), PFBA (0.01 mg/kg)である。
EPAの基準は、ピア・レビューを経て、PFOA・PFOSに関する健康ガイドラインや最大汚染レベル目標と全国主要飲料水規制の策定に用いられる。EPAは、PFASに関する全国主要飲料水規制を2022年秋に発行すると繰り返し宣言している。
法廷で「PFASには安全な濃度はない」
EPAが提案するPFOAとPFOSに関する有毒評価は際立って厳しいので、多くの人が測定する技術があるのかと疑問視している。しかし、PFOA/PFOS関連企業が着目すべきなのは、規制基準が"1.0" よりはるかに低いので、摂取基準が"0.0"に決定されてしまうかもしれないという点である。特にPFOAについては、発がん性が疑われる物質に分類されかねないので、EPAが事実上「安全な濃度はない」と認定してしまうかもしれない。
もしEPAの基準が通ると、専門家はそれに基づいて原告の訴えを評価することになるだろう。現実問題として専門家は、許容摂取量がとても低いのでEPAは安全な濃度はないと表明している、つまり類推から、摂取・吸収が可能なPFASを含んでいるあらゆる製品は消費者にとって危険であると証言するだろう。
法廷でのこうした流れに懐疑的な人は、石綿、ベンゼン、鉛あるいはシリカなど現在争われている裁判で同じパターンが見られることに注目してほしい。特に石綿(アスベスト)の裁判は50年続いていて、EPAの許容水準である「1立方センチメートルあたり0.1繊維」はとても低いので、事実上石綿には安全な濃度はないと見なす人たちがいる。反対の意見の人たちもいるが、「安全な濃度はない」という表現は陪審員の前でもう何年も言われ続けている。石綿裁判では、採掘・製材・製造会社がまず自己破産したが、過去30年に100を越える川下の会社も訴訟負担に耐えきれず倒産している。
PFASに関して同じ運命が待ち受けているか、まだ即断はできないが、石綿とPFASには類似性があり、我々はPFASの製造物責任訴訟の波が待ち受けていると推測している。科学的研究は蓄積されている中で、PFAS被害の当事者はEPAの今回の決定だけで訴訟に踏み切れると考えるようになるだろう。
“No Safe Level Of PFAS” – The Next Litigation Soundbite
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National Law Review, Volume XI, Number 341

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