PFAS中級編
- yd
- 2021年12月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年12月24日
EUの定義によると有機フッ素化合物、略称PFASとは、少なくとも1つ以上の-CF2-または-CF3-の脂肪族分子を含む化合物のことです。この条件を満たすものであれば、例えばPTFE(いわゆるテフロン、がいちばん有名)のような有機高分子化合物(ポリマー)が対象となります。PFASは総称で、全部で4730種類と言われますが、1万種類近いと書いている文献もあります。
PFASのうち、PFOAなど主要なものは、欧米や日本ですでに製造・輸入・販売の禁止対象になっています。しかし以前使われたものが自然界や体内に残留している他、PFOAの後継物質として2009年から使われているGen XなどのPFASは、当初毒性がより低いとされ、今でも製造されています。これらを含めたPFAS全体が集合的に使用禁止対象になろうとしています。
PFASの深刻な特徴は以下の通り。
1 古いレインコートの防水加工やカーペットの防汚加工などとして現在も身近に使用されていて、製品の経年劣化とともに剥離し、人体に取り込まれやすくなっている
2 工場周辺の地下水(井戸水)や池・湖などに超高濃度で残留し放置されている
3 ごく最近まで水道水の定期測定項目になっていなかった
4 ppt (10億分の1)、あるいはng/L(リッターあたり○ナノグラム)のごく微量な混入レベルでも健康被害が疑われている
5 自然界や体内ではほとんど分解されず、多くの汚染や健康被害の原因となっている
6 一般の市民はPETボトルや水道水などで、汚染物質に晒されていることを知らない
などの事情が挙げられます。特に5番目の特徴から、"forever chemicals" (「永遠に存在する化学物質」)の悪名を得ています。
健康被害としては、発がん性、不妊など妊娠に伴う病理、低体重胎児、小児発達障害、高血圧・高コレステロールなどとともに、免疫力低下、内分泌攪乱、肥満も関連性が指摘されています。特に免疫力低下について、ワクチンへの反応・適応の遅れがありうるとされているのは、昨今のコロナ・ワクチンの副作用・副反応や効力との関連でとても気になります(以上、米国環境保護庁EPAサイトから)。
米国では、連邦政府より州政府の方が敏感に対応しようとしています。カリフォルニア州の規制が最先端であり最高水準と言えます。現在施行準備段階にあるカリフォルニア州の水道水の基準は、PFOAは0.007ppt、PFOSは1pptとなる予定です。この基準は連邦政府の水道水基準である70pptや日本の厚生労働省の50ppt(いずれもPFOAとPFOSの合算値)と比べて、きわめて厳しく高い基準です。
現在の日本の水道局では、測定限界は5pptです。それ以下は測定不能、あるいは測定せず、あるいは測定できても公表不要、という扱いです。確かにpptというのはきわめて微量です。他のほとんどの物質が1ppm単位で測定されている時に、PFASだけ1ppt、つまり百万分の1ppmで測定することになります。しかしPFASの測定技術は確立しています。全国規模で定期的に測定し続けるには準備が必要でしょうが、健康被害を考えたらやらなければならない測定であると言えます。
コメント