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2021年10月、気候学者が温暖化対策の動向に警鐘をならす

  • 執筆者の写真: yd
    yd
  • 2021年11月9日
  • 読了時間: 6分

更新日:2021年11月17日

"Not settled" Prof. J. Ray Bates


このインタビューでは、米国NASAやコペンハーゲン大学で研究してきたProf. Ray Batesが気候変動対策の現状について批判的な発言をしています。気候変動について、「科学の論争はまだ終わっていない。」("The science is not settled.") と題されたこのインタビューは、気候変動が利害関係に左右され、政治家や活動家が科学的根拠のないまま、懐疑派や政治家が議論を封じている現実に疑問を呈しています。


このインタビューを掲載した非営利団体GRIPTは、アイルランドを本拠として、読者からの寄付のみで運営され、さまざまな社会問題を複眼的に議論することを目指しています。


気象学者ベイツ教授は冒頭で、化石燃料系企業や再生可能エネルギー企業に投資していないし、政府あるいは企業の研究費は応募も受領もしていないので、独立の立場から発言できる、また長年気象学(metereology)と気候学(climatology)を専門に研究してきたので、発言する資格があると述べています。現在はアイルランド首都ダブリンにあるユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)の特任教授です。経歴の詳細は、UCDウェブサイトにリンクされています(URL: http://www.raybates.net)。


ベイツ教授は、インタビューの中で、気候変動に関する最大の問題点は、議論が確定していると誤認されていることだと言います。以下箇条書きにして要点をまとめます。


1 この分野の専門家なら、温暖化の論争が決着したとは考えない

2 Steven Koonin, Unsettled: What Climate Science Tells Us, What It Doesn’t, and Why It Matters, BenBella Books, 4 May 2021 は好適な新刊書で、気候科学(Climate Science)は決着した分野ではないと述べている

3 私(ベイツ教授)はクーニン教授と同じく、現在は気候の緊急性(climate emergency)はないと考えている。気候の緊急性とは、コストを無視してあらゆる行動をとるべき事態だが、現在は長期的脅威があると考える段階である

4 IPCCの最新報告書についてメディアは、"red code for humanity"(人類にとって赤信号)と表現しているが、IPCCも科学者もこの表現を使っていない、グテレス国連事務総長が紹介する時政治的な意図から用いたものである

5 一般市民にとって、この気候変動問題は莫大な税金が支出される点で大きな影響がある。2021年5月にアイルランド共和国議会が可決した法律で、これから10年間、毎年7%ずつCO2排出を減らし、2050年に排出ゼロにすることが義務付けられた、IMFの試算ではアイルランドは毎年200億ユーロを支出することになる、もっと議論を尽くすべきだったが、カニンガム科学担当補佐官の委員会で気候担当専門家メンバーだった私(ベイツ教授)は今回の諮問委員会には招かれなかった、2017年のCitizens' Assemblyで気候がテーマだった時応募したが、書面提出と会場のうしろに座ることだけ許され、出席した市民と対話することは禁止された(補注: アイルランドの2021年度予算総額は47億ユーロ)。

6 温暖化はclimate sensitivity(CS. CO2が二倍になれば気温が何度上昇するか)という指標で測定できるが、その価値評価(value)は決着していない、IPCCはCO2のCSは3度(CO2が二倍になれば気温が3度上昇する)上がると推計し、1.5度未満と予測する研究はないと主張するが、私(ベイツ教授)やかなりの数の研究者が1.5度未満と予測している、私の論文では約1度と述べている、これは個人的見解ではない、サテライト・データと数学的モデルに基づくものだ、これは完全に証明することは不可能だが、有効な証拠である、この論文は査読論文として権威あるEarth and Space Science誌に掲載された、しかしこれらの研究はIPCCの報告書には引用されていない

7 私(ベイツ教授)の前述の論文は、出版の6ヶ月後、雑誌社から、近年有数のダウンロード数を記録したと賞賛された

8 97%の科学者が気候変動は人為的なものであると主張していることについて、私(ベイツ教授)もCO2が温暖化に寄与していると考える、ただし人為的CO2がどれくらい寄与しているかについてIPCCより低く推定している

9 なぜ私(ベイツ教授)のを含む複数の論文がIPCC報告書に引用されないか、特にRichard Lindzen and Choiの2011年論文は低いclimate sensitivityを説明するもので、この何十年もの中で、気候科学で最重要の論文であるにもかかわらず、旧IPCC報告書では引用されたが否定され、新IPCC報告書では引用さえされなかった

10 科学者は時代の潮流から逸脱することは難しい、Koonin教授もこの本を書いて強く批判された

11 気候科学は経済的影響が巨大なので議論が難しい、国連のWMO/UNEPがIPCCを統括していて、途上国票が方向性を決定する、この分野は過度に政治化され、John Christy教授はオフィス窓を銃撃されるなど、脅迫されるようになった、私(ベイツ教授)も面と向かって批判された

12 若い研究者は研究費がないと研究ができない、研究費申請の審査機関がどのような研究を求めているかは選考に影響がある、私は半分引退しているから自由にものが言える

13 アイルランドのメディアは均質で、反対の見解は紹介しない、2015年RTE公共テレビ局に私(ベイツ教授)は招かれ、研究論文の成果を話したが、あまりにも反響が大きかったのでそれ以来招かれない

14 Farmers' Journalは購読している、他の雑誌より気候の政治学や科学に関して自由な議論を展開している、世論は環境対策のコストにもっと関心を払うべきだ、科学的根拠に基づく支出を推進するためには専門家を含む自由な議論が必要である

15 異常気象についてIPCCは以前は慎重だった、温暖化が極端な気候に影響するかどうか、1850-1900を基準として1度上昇する予測に対して、昨夏カナダのような異常気象時の気温上昇はもっと高かった、Clifford Mass教授(ワシントン大学)は温暖化の影響を否定している、事前事後に明確なトレンドがあるわけではない

16 アイルランドの異常気候は1947厳冬と1976年猛暑だが、温暖化が影響したとは考えられない、Hodgkins教授の洪水の研究でも増大傾向は見られない

17 ティーンエイジャーの環境の恐怖心(eco-anxiety)は科学に依拠していない、2007年平和賞授賞式でアル・ゴアは2016年に北極の氷はなくなると断言したが、現在までなくなっていない、わずかに減少しているが、このトレンドではすべて消失するのに200年かかる、他方、1979年以降サテライト・データで南極の氷は微増である

18 私(ベイツ教授)もクリーンな環境を支持したい、持続可能な発展を支持するし、海のプラスチック汚染は嫌いだ、環境活動家と同じ考えを持っている、同時に科学者としては客観的に話す責任がある、一部環境活動家は行き過ぎている、科学的知見を客観的に見ていない

以上


私のコメント

ベイツ教授の10番のポイントに関する点で、私の体験をひとつ。

2015年頃、日本で温暖化とCO2に関するセミナーに出席した時、CO2原因説に批判的な研究者が、「科学研究費を申請する時、人為的CO2が温暖化の主因でないと書いたら採択されないので、CO2主因説に関する研究であると申請せざるをえない」と嘆いていたのを思い出します。

私もインドや中国などで石炭由来の大気汚染がきわめて深刻であることに心を痛めています。また人類がCO2を発生して温暖化にある程度影響していることは否定しません。しかし、IPCCや科学者の知見が私たち市民に正確に伝わっていない現実をとても心配しています。





 
 
 

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