PFASはナノグラムで測定する
- yd
- 2021年11月22日
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更新日:2021年12月9日
PFAS(有機フッ素化合物)の測定単位は、ナノグラム、1リッターあたり○ナノグラム(ng/L)です。汚染物質の中でも際立って微量での健康被害が疑われています。今回はその話です。単位のことをご存知の方は、このブログページ末尾のカリフォルニア州の規制基準案の段落だけ読んでみてください。
説明
通常の水道水汚染物質の規制基準は、単位はmg/L (1リットルあたり○ミリグラム)です。1mg/Lは、水1000gあたり1mgですから、1/1000gX1000=百万分の1、つまり1ppm (parts per million)です。1mg/Lイコール1ppmです。
厚生労働省の水道水質基準の表を見ると、汚染物質の規制基準はmg/Lで統一されています。
例えば一番上の「水質基準項目」の表を見ると、3行目左側がカドミウム及びその化合物の行になっています。「カドミウム及びその化合物 カドミウムの量に関して、0.003mg/L以下」が基準値となる、つまりカドミウムは水道水1リッターに0.003mgを越えて検出されると水質基準を満たさないことになります。
0.003mg/Lは、mgの1/1000であるマイクログラムmicrogram (μg)で表記すると、3μg/Lとなります。"μ"はマイクロの意味で、百万分の1を表します。ミリmilli (m)が1/1000、マイクロmicro (μ)がまたその1/1000となります。1gramの1/1000の1/1000が1μgramとなります。カドミウムはかつて日本の公害で多数犠牲者を出した物質でもあり、0.003mg/L、つまり3μg/Lが規制値となっています。これは3ppb (parts per billion)と表記することもできます。
ところが、PFASは規制値は、μgよりさらに1/1000小さい値となります。さきほどの厚生労働省のページの2つ目の「水質管理目標設定項目」の最下段がPFASの行です。右側の欄の記述は以下の通り。
「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)の量の和として0.00005mg/L以下(暫定)」
表では単位を統一するためか、PFASは0.00005mg/Lと表記されています。マイクログラムでは0.05μg/Lとなります。マイクログラムのさらに1/1000の単位はナノグラムnanogramです。それで表記すると50ng/Lになります。
0.00005mg/L=0.05μg/L=50ng/L
50ng/Lは、50ppt (parts per trillion)とも表記されます。
PFOSとPFOAに関する現在の暫定基準は、合算して50ng/L以下でなければならないということになります。
ちなみにさきほどのカドミウムの規制値をng/Lで表記すると、
3μg/L=3000ng/L
となります。
PFAS以外でng/Lで表記するほうが便利な汚染物質はありません。
逆にPFAS規制基準をmg/Lで表記すれば、
50ng/L=0.05μg/L=0.00005mg/Lに相当します。mgで表記するとゼロが多すぎてよくわからなくなります。
大混乱したと思いますが、厳しく規制されている重金属カドミウムより、PFASは少なくとも60倍厳しく規制される(1/60しか許容されない)物質ということになります。ごくごく微量で健康被害が発生しうるわけです。
以上おさらいすると、単位は1/1000ずつ小さくなっていきます。
1mg/L=1ppm
1μg/L=1ppb
1ng/L=1ppt
PFASの日本での暫定基準は、
50ng/Lまたは50ppt
です。
追い討ちをかけるようですが、関連情報をふたつ。
1 カリフォルニア州の状況
2021年11月現在、以下のような方向性が見えてきています。カリフォルニア州では、2021年7月に水道水基準案として、主要なPFASである2種類について、
PFOAは0.007ppt
PFOSは1ppt
と提案され、公開ヒアリングを経て、決定していく方向です。米国連邦政府基準はPFOA+PFOSの合算値で70pptですから、カリフォルニア州の基準案はとても厳しいものです。特にPFOAは0.007ppt、つまり、7picogram/Lとなります。経過は分かり次第ご紹介します。
2 日本の測定限界
現在厚生労働省や都道府県では、2種類のPFASのみ測定対象となっていて、その2種類の合計値が50ng/L未満であれば一応合格となっています。また同じく合算値が5ng/L以下は測定限界以下として扱われています。たとえば東京23区内では、世田谷区の2カ所を除いて、すべての測定地点で「<5ng/L」と表記されます。つまり、検査したら5ng/L未満だったので、5ng/L未満であることは確かだが、4ng/Lかもしれないし、1ng/Lかもしれない、測定不能だったという意味です。ところが、カリフォルニア州の規制値案は1ng/Lレベルであり、特にPFOAは0.007ng/Lが規制値案として浮上しているので、日本でもさらに精密な測定が求められることになるかもしれません。
現在日本の検査機関によっては、PFASは0.1ng/Lまで測定してくれるようですが、picogram (ppp)レベルまで測定してくれるところがあるのか、私はまだ把握できていません。
Keywords: nanogram, PFAS

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